2020年11月14日土曜日

ヴラディスラウス・ストラウドの憂鬱 2

始祖「あん? 今、何て言った?」
執事「今週の請求書を支払うだけのお金がありません」
始祖「パスカル おまえさ、チベットスナギツネに似ているって人に言われないか?」
執事「話をそらさないでください お金がない理由は明白です 始祖様、あなたが全然働こうとなさらないからです」

  「始祖」というのは称号であって職業ではない
 始祖だからといってどこからか給料をもらえる
 わけではないのだ
 かつてはヴァンパイアからの上納金制度があっ
 たが、ヴァンパイアの近代化を進める先代の始
 祖によって廃止された
 始祖「親父め、よけいな真似を」
 先代は貿易商としてそこそこの財を築いていた
 のだが…
執事「あなたは、先代が残した資産をわずか7年でほぼ使い切ったわけです」
始祖「しかたねえな 上納金制度を復活させるか?」
執事「暴動が起きますよ」
始祖「ならば、いっそスレイヤー家のおじ貴※に『始祖』の称号を売りつけるか 10億シムオリオンくらいで」
※始祖様のおじ・スレイヤー卿は前々から「始祖」の座を狙っているという設定
執事「…私はまじめに話しています 始祖様もまじめに考えてください(怒)」
始祖「働けって言われてもさ 僕ちゃんってば生まれつき体が弱くって…(ごほごほ) 
それに『生涯不働(はたらかず)』の誓いを立てているし」
執事「……!!(ぶちっ)」←注:堪忍袋の緒が切れた音
カッ(靴音)
執事「…働け」
始祖「パスカル おまえ、7年の間にずいぶん態度がでかくなったな 何様のつもりだ?」
執事「この7年間、1シムオリオンも稼いでいない甲斐性なしにそんなことをおっしゃる資格はありませんよ」
執事「始祖様は語学が堪能でいらっしゃいますから、お父上のように貿易商をなさっては」
始祖「俺に商売が向いていると思うか?」
執事「……」
執事「それならば、パイプオルガンの有料コンサートを開くとか」
始祖「俺は気が向いた時にだけオルガンを弾く 誰かに聴かせたくて弾いているわけじゃない」
執事「……」
執事「私としても、可愛いサラ様を路頭に迷わせる事態は避けたいのです …あなたはともかく」
始祖「俺が路頭に迷ってもかまわないと?」
執事「自業自得です」
とりあえずは今週の請求額の不足分を何とかしようということで両者の意見は一致した
始祖「何だ、エルヴィラ おまえを呼んだ覚えはない」
エルヴィラ「あなたに用があって来たわけじゃなくってよ あの黒髪の坊やに呼ばれたからよ」
始祖「パスカルなら夜釣りに行っている」
エルヴィラ「じゃあ、帰ってくるまで待たせてもらうわ」
始祖(パスカルに呼ばれた? こいつら、いつの間にそんなに仲良くなったんだ?)
エルヴィラ「今、サンマイシューノのヴァンパイアの間で『なっちゃんの血清フルーツれしぴ』が大ブレイク中なの」
始祖「なっちゃん?」
エルヴィラ「覆面料理研究家よ なっちゃんこと那智ベス」
始祖「那智っていうと日系か?」
エルヴィラ「さあね、どうもヴァンパイアじゃなく人間らしいってことしかわからないの 本名はもちろん、男か女かさえ非公開なんだって」
執事「……」
エルヴィラ「今度、そのレシピ本を持ってくるわね パスカル、あなたにあげるわ」
執事「ありがとうございます …では、エルヴィラ様 のちほど私の部屋で」
始祖「………」


0 件のコメント: