2020年11月1日日曜日

おにいさんといっしょ 9

始祖「何だなんだ、あの態度はよ 超むかつくっての」
エルヴィラ「くすくす …さて、と そろそろあたしもサンマイシューノに戻ろうかな」
始祖「ああ、マシューによろしく言ってくれ」
エルヴィラ「!?」
エルヴィラ「ヴラド、なぜマシューの名を知ってるの? あたし、一度も彼の名を口にした覚えはないわ」
始祖「マシュー・ハミング、本名マシュー・スリープ 役者志望の貧乏青年
今はエルヴィラ・スレイヤーのマンションでおさんどんをやっている」
始祖「始祖の諜報網を甘く見るなよ それから、マシューと大喧嘩したってのも嘘だ」
エルヴィラ「なぜそう断言できるの?」
始祖「マシューに直接聞いたからな、おととい長距離電話で」
エルヴィラ「……… ヴラド、あなた最初からわかっていたのね?」
始祖「『彼氏と喧嘩しちゃった、しばらく泊めて』と人のベッドに潜り込んでくる女の言葉を鵜呑みにするほど俺はお人好しじゃあない 本家に先代の隠し子が現れたという情報をキャッチしたおじ貴が、偵察のため娘を送り込んだんだろうと容易に推察できたぜ」
始祖「俺が言うのも変だが、あのマシューってのはいい奴だな おまえの彼氏にしておくのがもったいないくらいだ ちょっと実家へ行くと言って家を出たきり戻ってこないおまえの身を本気で案じていた」
エルヴィラ「10日くらいで戻るって言っといたのに」
始祖「10日もあれば、先代の隠し子騒動の真偽がわかるってふんだわけだ」
始祖「ついでにサラに接近して、将来スレイヤー家の『手駒』として使えるか値踏みしてたのか」
エルヴィラ「そこまでお見通しとは恐れ入ったわ」
始祖「だてに7年も始祖をやっとらん 一番信用できないのは身内だってことも熟知している」
エルヴィラ「はいはい、正体を見破られた性悪女はとっとと退散しますよ」
始祖「どうせ、サンマイシューノに戻る前に実家に立ち寄るんだろう」
始祖「おまえの親父に伝えろ」
始祖「始祖なめんじゃねえってな サラにも一切、手出しすんなよと」
始祖「…あ、それからもうひとつ 乳がでかすぎる女は俺の好みじゃない」

びった~ん!! ←注:平手打ちの音
エンサイクロペディア・ヴァンピリカ第二巻
「周知の事実であるがヴァンパイアは鏡に映らない 彼らがどうやって身支度を整えているかは謎である」
始祖「…ったく、ヴァンパイアってめんどくさい種族だな」
執事「始祖様、サラ様のおしたくができまし…」
始祖「ああ、パスカル ちょうどよかった 髭の剃り残しがないか見てくれ」
執事「………」
始祖「………」
始祖「パスカル?」
執事「…失礼ですが、どちら様で?」


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