2021年3月15日月曜日

私は如何にして心配するのを止めて吸血鬼を愛するようになったか 1



先代の始祖が急逝してひと月ほど経過した頃 ストラウド・マナーに来客があった
アーロン・スレイヤー「ヴラド この間私が提案した件だが」 
アーロン「年若い君が『始祖』という大役を果たすのはなかなか気苦労が絶えないだろう」 
アーロン「私が摂政として、君のサポートをさせてもらうのが一番ベストじゃないかと思うのだ」
始祖「……せっかくですが、おじ上」
アーロン「ん? まさか私の申し出を断る気か?」
始祖「そのまさかです」
始祖「おじ上の手をお借りしたい時はこちらからそう申し上げます おじ上のお気遣いには心から感謝しております」(←棒読み)
意訳:こちとら、てめえの手助けなんかいらねえんだよ 引っ込んでいろ、くそ爺
アーロン「くっ」
アーロン「こ、後悔するなよ」
始祖「じい、じいはいるか?」
執事「お呼びですか、坊ちゃま※」
始祖「おじ上がお帰りだ 玄関までお見送りしろ」
注:現・始祖様が産まれる前からここに仕えている老執事は、いまだに彼のことを「坊ちゃま」と呼んでいる
Ziggy「ふがふが♪」
パスカル「ふふ たんとお食べ」
アーロン「ええいっ 見送りなどいらん!!」
アーロン「あのくそガキめ」
パスカル「……」
パスカル「先ほどの方がおじ上ですか かなりご立腹のご様子でしたが」
始祖「アーロン・スレイヤー、分家の現・当主 死んだ親父のすぐ下の弟だ」
パスカル「私は、先代のご葬儀の際、あの方のお姿を拝見した覚えがない※のですが」
注:始祖の葬儀に参列できた人間は老執事だけだった パスカルたち他の使用人は弔問客を遠目に見ただけである
始祖「そりゃそうだ あの人は親父の葬儀に間に合わなかったからな」
始祖「大遅刻の理由を教えてやろうか 大笑いだ」
パスカル「は?」
始祖「親父の急死で、あの人は自分に次期『始祖』の座が転がり込むと狂喜乱舞した」
始祖「始祖に似つかわしい威厳のある服をあれやこれやと選んでいて、この館に到着した頃には既に葬儀が終わっていた」
始祖「しかも、弱冠15歳のガキ(すなわち俺)が亡き父の跡を継ぐことを宣言していた」
※参照:That's Another Story #10
パスカル「……(う~ん、笑っていいのか悪いのか)」
始祖「まあ、俺としては、別に始祖の座に執着していたわけじゃないがな おじ貴と違って」
パスカル「では、何故、始祖に?」
始祖「そりゃあ決まってるだろう おじ貴の悔しがる顔を見たかったから」
パスカル「……… 始祖様、あなた人から『性格悪い』って言われませんか?」
始祖「ああ、しょっちゅうな」


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