2025年6月12日木曜日

ヘンフォード・オン・バグレーより愛をこめて 7

パスカル「ずいぶんうなされておいででしたね いつもの悪夢ですか」
始祖「…… 行くな」
パスカル「は?」
始祖「俺から離れるな」
パスカル「? 寝ぼけていらっしゃいますか」
パスカル「どこへ行くとおっしゃるんですか 私の帰る場所はあそこ(=ストラウド・マナー)しかありませんよ」
始祖「…いつからそうなった」
パスカル「『ストラウド・マナーがおまえの家だ』 もうずいぶん前にそうおっしゃったじゃないですか」
始祖「…… そんなこと言ったか」
参照記事:早春にして君を放れ 9
パスカル「始祖様は記憶力がよろしいくせに、ご自分にとってご都合が悪いことは忘れたふりをなさる」
始祖「……(図星)」
ずるいお方だ、とパスカルは笑った

その時、俺は心に決めたのだ
あの夢の通りに、パスカルが死に瀕した時
俺は迷わず彼を「仲間」に加えよう―――と
ヴァンパイア化の申し出をふたつ返事で断った彼だが
むざむざ若死にするよりは、ヴァンパイアとなって
俺と共に生きる道を選んでくれるはずだと…



それは俺の思い上がりだったと気づくのは


そう、10年近くのちのことになる








我が ストラウドの 一族は 死なば 瞬時に 灰と化す
それに反して 人間ときたら
いちいち 亡骸(なきがら)を 土に還して やらねばならん
始祖「人間ってめんどくせえ種族だな、おい」
始祖「…… ちっ、返事もなしかよ」
始祖「おまえのへらず口も、もう二度と聞けないのか」
始祖「…… せいせいするな」
おまえの死を 報せる手紙を そろそろ サラが受け取る頃だ
パセリとセージ、ローズマリーに タイム♪
海と陸地の はざまの 1エーカーの 畑
たわわに 実った 胡椒を 収穫しても♪
おまえは 二度と 俺の元には 戻ってこない


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