2021年2月13日土曜日

早春にして君を離れ 3

使用人A「では、私どもはこれで休ませていただきます」
使用人B「お休みなさいませ」
執事「お疲れ様でした」
執事「ああ、表玄関は施錠しないでください まもなく始祖様がお戻りですから」
使用人A「かしこまりました」
執事「……」
執事「それにしても遅いですね」
執事「ディナーならもうとうに終わっている時間ですが」
執事「おまえのご主人様は何やってるんでしょうね」
Ziggy「にゃ?」
執事(いくら何でも遅すぎますね)
執事(何かあったのでしょうか?)
その頃、私の両親はニューヨークへ向かう客船に乗っていた
ニューヨークに着いたら送ってくれる絵はがきを心待ちにしていた私だった
教師「パスカル・ピース、ここにいたのか」
私「ランド先生、何かご用ですか?」
教師「パスカル、心を落ち着けて聞いてほしい」
教師「たった今、連絡が入った 君のご両親が乗った船が北極海で遭難したそうだ」
いつも冗談を言って私たち生徒を楽しませてくれるランド先生
そうゆう冗談は笑えませんよ、と私は言ってやりたかった
でも、先生の蒼白な顔からそれが冗談でないことがわかった
執事「…夢か」
久しぶりにあの時の夢を見た
あれから4年の時が流れたのに…
心のどこかで、いまだに両親の死を受け入れられないのだ
ひょっこり両親が戻ってくるのでは、と淡い期待さえ抱いている
そんな奇跡はけっして起きないとわかっているのに… わかっているはずなのに…


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