2020年12月5日土曜日

パスカル・ピースのΨ難(さいなん) 4

パスカル母「…2ヶ月ですって」
パスカル父「…本当か!?」
パスカル母「ただいま、パスカル」
パスカル「かあさん、お帰り 病院はどうだった?」
パスカル父「サンタさんもようやく根負けして、おまえの願いを叶えてくれたようだ」
パスカル「え? それってもしかして…?」
パスカル母「来年の夏には、うちにもコウノトリがやって来るわよ」
パスカル「やった~♪」
パスカル「とうさん、頑張りましたね」
パスカル父「…やな子だね、おまえ」
パスカル母「来年のクリスマスは一家4人でお祝いできるわね」
――でも、その言葉が現実になることはなかった
それが私にとって、両親と過ごした最後のクリスマスだった
執事「…夢か」
昔の思い出はとうに封印したつもりだったのに…
別に、今の境遇を不幸だとは思っていません
でも、もし、あのまま時が流れていたら
私は、今とは全然違う人生を送っていただろうと 
思うことくらいは許されますか? 
サラ「不思議よね」
執事「何がですか?」
サラ「あたしはこの春にかあさまを亡くしたし」

始祖様は産まれた時に母上を、十五歳で父上を亡くされた
Ziggyも産まれてすぐに母猫と死別した そして、私も…
サラ「ここに住んでいるのは、みんな、親なしっ子なんだよね」

そう、きっかけはこのサラ様のなにげないひとことでした
執事「さよう…で、ございますね」

ふいに涙がこみ上げてきたのはなぜでしょうか
執事「………っ」
サラ「パスカル?」
サラ「どうしたの? どこか痛いの?」

…強いて言えば「心」が
サラ「パスカル、待ってて おにいさまを呼んでくるから」

情けない話ですが、涙が止まらなくなりました
エルヴィラ様、私はあなたに嘘をつきました
始祖様が温かい家庭を築かれるのが私の夢だなんて嘘っぱちです

――本当に、私が見たかったのは
見たかったのは
あの夢の続きだったんです

0 件のコメント: