2021年1月20日水曜日

時には昔の話を 2

始祖「パスカルに出会ったのは、俺が十五の時だった あいつはひとつ上の十六」

お嬢様「パスカルというとフランス系ですの?」
始祖「父方の曾祖父の名をもらったとか 母方の祖母が東洋人で… ぶっちゃけあいつのルーツはようわからん」
始祖「表向きは、俺の身の回りの世話をする住み込みの使用人」
始祖「だが、実際は坊ちゃま専用の『食料庫』だった」
始祖「十四で両親を海難事故で失い、親戚中をたらい回しにされたあげくこの館に売り飛ばされたらしい」
始祖「それでも、アヘン漬けにされてペドフィリアのヒヒ爺相手に股を開くぐらいならば」
始祖「ここでヴァンパイアの餌になるほうがまだマシかな、と」

お嬢様「おじさま、レディの前でそうゆうお下品な発言はお控えになって」
始祖「俺が言ったんじゃない、あいつがそう言ったんだ そういえば、俺がヴァンパイアとわかってからも態度を変えなかったのはあいつだけだったな」
始祖「たいていの人間は俺がヴァンパイアと知るとおぞけふるったものだが」
お嬢様「おじさまは人間だけでなく、ヴァンパイアにも忌み嫌われていますものね」
始祖「よけいなことは言わんでよろしい」
始祖「チベットスナギツネみたいなポーカーフェイスで、実際、何を考えているかわからん奴だった」
始祖「そのくせ思ったことはずけずけと口にした 誰にも媚びたりおもねったりすることはなかった でも、不思議と誰からも好かれた」
始祖「おまえの母親(=サラ)も、兄貴の俺よりもあいつになついていたくらいだ」
始祖「…ガキの頃、ひと晩だけ体を重ねたことがある」
始祖「あいつに言わせると『忘れてしまいたくても忘れられない悪夢の一夜』だったそうな」
お嬢様「くすっ」
始祖「『人生最大のミステイク』だとさ」
執事「長じてここの執事になった 言動にはいささか問題ありだったが」
始祖「まあ、執事としてはそこそこ有能だったと思う」

始祖「あいつが焼いた血清フルーツパイの味は今でも忘れられん」
始祖「ある時、俺はあいつにヴァンパイアにならないかと誘った」
お嬢様「おじさま、それって…」
始祖「そう、俺としては、遠回しのプロポーズのつもりだった」
注:始祖様はバイセクシャル設定です


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