2021年1月21日木曜日

時には昔の話を 6

三男「♪~」
Ziggy「にゃ?」
三男「始祖様 血清フルーツ入りクッキーが焼き上がりました」
始祖「これも『なっちゃんの血清フルーツれしぴ』に載っていたのか」
三男「さようでございます」
三男「お口に合いましたか?」
始祖「まあ、悪くはない」
突然ですが、執事たちのユニフォームが変わります
始祖様の気が変わったというより、プレイヤーの気分転換ですw
長男「あっ 真っ白いユニコーンがそこに」
三男「え? どこですか?」
長男「(今のうちに)ささっ」
三男がよそ見している間に駒を入れ替えるとは… 長男よ、姑息な手を使うでない
すべて世はこともなし


時には昔の話を 5

パスカルを死なせない唯一の手段 
それは今ここで彼を我がストラウドの一族に加えることだ

パスカルの喉元に牙を立てエナジーを流し込めば、彼はヴァンパイアとして甦る 
そして、老いや死への怖れから解放されるのだ とこしえに…

執事「…いけません」
始祖「!?」
執事「それは私が望まぬことです」

始祖「おまえ、俺が今何をしようとしているかわかったのか」
執事「長いつきあいでございますから」
人として生まれ、もがき苦しみ、人として短い生を終える――それが彼の矜持
ならば、それを叶えてやるのが俺の務め そうゆうことだな

執事「始祖様? あなた、今にも泣き出しそうなお顔をされていますね」
始祖「ヴァンパイアは泣け… いや、泣かない 涙腺がないからな」
執事「…つくづく、めんどくさい種族ですね」
始祖「…めんどくさい、言うな」

あなたにはそんな悲しげな顔は似合いません
嗤ってください、いつものように 

ああ、おまえの望み通り嗤ってやろう 
我が一族に加わるという栄誉を拒み、
ぶざまに野垂れ死んでゆく愚か者を

腹の底からあざ嗤ってやろう

…それでこそあなた様です

あなたと出会ったのが、私の人生最大のミステイク
でも、けっこう楽しゅうございましたよ

――それが、パスカルの最後の言葉だった


パセリとセージ、ローズマリーにタイム♪

針も糸も使わずに 麻のシャツを仕立てても
枯れた井戸で そのシャツを洗っても
おまえは 二度と 俺の元には戻ってこない


時には昔の話を 4

スカボローフェアに行ったなら 
パセリとセージ、ローズマリーにタイム♪
長男「誰か歌っている この声は始祖様?」
三男「顔に似合わずいい声ですね」(ほっとけ by 始祖)
※余談ですが、始祖様はテノールのイメージです
お嬢様「この歌は…」
お嬢様「かあさまが子供の頃、枕元で執事さんが歌ってくれたと」
こよなく愛したあの娘(こ)に 伝えておくれ♪
…今でもおまえを愛している、と
お嬢様「子守歌代わりに歌ってくれたのはパスカルだったんだ」
針も糸も使わずに 仕立てておくれ 麻のシャツ♬
枯れた井戸で そのシャツを洗ったら
僕らは 恋人同士に戻れるだろう♪
どれだけの時が過ぎようとも、俺はあの日のことを決して忘れないだろう

執事「…ごふっ」

フォーゴットン・ホロウの陰湿な気候がいつしか彼の体を蝕んでいたことに俺は気づかなかった 
いや、気づいてやれなかった

始祖「パスカル!!」

執事「…剥製は勘弁してくださいね」
始祖「え?」

執事「ほら、ずいぶん昔ですが、私の功労を称えて寝室の壁に飾ってやるとおっしゃったじゃないですか」
始祖「馬鹿、あれは冗談だって言ったろうが」

執事「…そうですね ならば、ちゃんと土に還してください」
そうだった、こいつはこうゆう奴だった 
今まさに死の淵にありながらも、こんな軽口を叩く奴だったのだ

こいつをこのまま死なせたくない  その時はそのことしか頭になかった


2021年1月20日水曜日

時には昔の話を 3

始祖「ところがあやつめ、二つ返事で断りやがった 『お断りします』と」
執事「ご存じのように、私は両親を亡くしていきなり社会に放り出されました 人の欲深さや醜さ、酷薄さを否応なしに見せつけられました」 
執事「でも、人間をやめたいと思ったことは一度だってありません まだそこまで人間に絶望はしてませんので」
執事「たぶん、生まれついてのヴァンパイアのあなたにはわかっていただけないでしょうね」
始祖「わからん 俺は馬鹿なのか」
執事「だからおわかりいただけないだろうと申しました」
人間として生まれ、もがき苦しみ、人間として短い生を終える――それが自分の矜持と語る男に言うべき言葉が見つかるはずもなかった
始祖「少ししゃべりすぎたかな 若いおまえにはこんな爺の昔話なんぞ退屈だったろう」
お嬢様「いえ、そんなことはありませんわ おじさまがこんな楽しそうにお話しされるなんて初めてですもの」
お嬢様「よっぽどそのパスカルという執事さんをお気に召していらしたのね」
始祖「……」
お嬢様「それからどうなりましたの?」
始祖「この館に来て19年目の冬」
始祖「真っ赤な血を吐いて逝った まだ35だった」
お嬢様「………」
始祖「…だから、あいつの話はこれでおしまいだ」
――俺はお嬢に嘘をついた 
パスカルの話にはまだ続きがある 
だが、それは誰にも話すつもりはない
三男「始祖様、お夜食をお持ちしました」
始祖「ん? いい匂いだな」
三男「血清フルーツパイです お嬢様から、始祖様の好物だとお聞きしましたので」
始祖「お嬢に?」
…懐かしい、パスカルの味だ
始祖「おまえ、このパイのレシピを知っていたのか?」
三男「この間、図書室の大掃除をした際、『なっちゃんの血清フルーツれしぴ』という古い本を見つけまして」
三男「見よう見まねで作ってみました お口に合いましたか?」
始祖「…まあな、まずくはなかった」
始祖「また焼いたら食ってやらんこともない(意訳:おいしかったからまた作ってね)」
三男「かしこまりました(…めんどくさいお方だ)」