2021年1月21日木曜日

時には昔の話を 5

パスカルを死なせない唯一の手段 
それは今ここで彼を我がストラウドの一族に加えることだ

パスカルの喉元に牙を立てエナジーを流し込めば、彼はヴァンパイアとして甦る 
そして、老いや死への怖れから解放されるのだ とこしえに…

執事「…いけません」
始祖「!?」
執事「それは私が望まぬことです」

始祖「おまえ、俺が今何をしようとしているかわかったのか」
執事「長いつきあいでございますから」
人として生まれ、もがき苦しみ、人として短い生を終える――それが彼の矜持
ならば、それを叶えてやるのが俺の務め そうゆうことだな

執事「始祖様? あなた、今にも泣き出しそうなお顔をされていますね」
始祖「ヴァンパイアは泣け… いや、泣かない 涙腺がないからな」
執事「…つくづく、めんどくさい種族ですね」
始祖「…めんどくさい、言うな」

あなたにはそんな悲しげな顔は似合いません
嗤ってください、いつものように 

ああ、おまえの望み通り嗤ってやろう 
我が一族に加わるという栄誉を拒み、
ぶざまに野垂れ死んでゆく愚か者を

腹の底からあざ嗤ってやろう

…それでこそあなた様です

あなたと出会ったのが、私の人生最大のミステイク
でも、けっこう楽しゅうございましたよ

――それが、パスカルの最後の言葉だった


パセリとセージ、ローズマリーにタイム♪

針も糸も使わずに 麻のシャツを仕立てても
枯れた井戸で そのシャツを洗っても
おまえは 二度と 俺の元には戻ってこない


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